訪問歯科衛生士の仕事を知ろう ~Vol.1 外来診療との違い ~

歯科訪問診療

2023/04/05

Vol.1 外来診療との違い

歯科衛生士16年目、歯科訪問診療7年目のSATOです。歯科訪問診療の現場では、外来診療と異なる部分がたくさんあります。これから訪問診療に取り組まれる歯科衛生士さんや、新たに訪問診療の扉を叩こうと考えている歯科衛生士のみなさまに、実際の訪問診療の業務はどのようなものなのかをお伝えいたします。

 

《目次》
1.訪問歯科と外来診療の基本的な違い
2.在宅と施設の患者さんの気をつけるべき点
3.私が訪問歯科衛生士を選んだきっかけ

 

1.訪問診療と外来診療の基本的な違い

訪問歯科と外来の違うところは、やはり患者さんのご自宅や施設などに伺うという点です。そのため、診療にあたるメンバーや患者さんの状態、対応方法などが外来診療と違います。

 

◆お伺いするメンバーは入れ替わりながら

患者さんの自宅や施設に伺うメンバーは歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、コーディネーターです。この組み合わせを、患者さんの治療内容によって変えて伺います。歯科医院の考え方次第の部分もあり、歯科医師一人でお伺いする医院もあります。歯科医師は患者さんの治療、歯科衛生士は口腔衛生業務、歯科助手はアシスタント、コーディネーターは運転やアポイントの管理を行います。

 

◆患者さんは基本的に全身疾患を有する有病者

歯科訪問診療では、歯科医院に通うのが難しい患者さんのところへお伺いします。高齢の方、何らかの疾患がある方がほとんどです。仰臥位しか取れない方だけではなく、座位で治療を受けるのが可能な方もいらっしゃいますが、そのような方でも、通院できない何らかの問題をお持ちの方です。訪問歯科に勤めて初めて「家から歯科医院に通うのが難しい方ってこんなにいらっしゃるんだな」と気がつきました。

 

◆歯科衛生士が行う口腔ケア

歯科衛生士は、口腔衛生業務として、ブラッシングやプラークの清掃などを行います。また、唾液腺マッサージなど、「食べる、話す」などといった口腔機能向上のためのケアを行います。歯科医師が三ヵ月に一度検診に行っていれば、歯科衛生士はその期間内、一人で口腔ケアにお伺いすることができます。保険診療の範囲内では月に四回のお伺いが可能です。

 

2.在宅と施設の患者さんの気をつけるべき点

在宅で歯科訪問診療を受ける患者さんと、施設で歯科訪問診療を受ける患者さんには、点数計算の仕方などの違いがあります。歯科衛生士がご訪問の際に気をつけなければならないことも異なります。

 

◆在宅の方

全身状態について

在宅の患者さんで気をつけなければならないのは、全身状態についてです。初診の時に、歯科以外の治療、投薬を受けているかを歯科医師がお聞きしています。歯科衛生士はその情報を見ながら、訪問中になにか変調をきたすとしたらどんなことか、変調をきたしたらどうするのか考えながらご自宅へ伺います。ご家族の方がいらっしゃれば良いのですが、独居だったり、ご家族がお留守だったりすることも多いです。患者さんと二人になることも多いため、全身状態には気を配っています。

ライトやベッドについて

ライトやベッドの位置は、ご自宅の数だけ違いがあります。時々本当に暗くて、患者さんの口元が見えにくいお宅もあるので注意が必要です。歯科衛生士の訪問は、ライトなどのアシスタント業務をしてくれるメンバーが付き添わないケースもあるため、自分で明かりを確保し、立ち位置を考える必要があります。職員の方が介護しやすいようにだと思いますが、施設の方がそのような環境が整っています。

 

◆施設にご入居の方

施設の方と連携

施設にご入居の方の口腔ケアは、職員の方と連携して行うこともあります。お風呂や食事、おやつの時間などが決められているため、必要に応じて教えていただきながら予定を立てます。また、何かあれば看護師さんに報告をします。

 

感染対策

施設では特に感染対策が重要です。ご自宅に比べ広がりやすいためです。アルコールスプレー、入り口での検温は必須です。

 

《Break Time》
いつのまにか車にも詳しく?
歯科訪問診療では訪問車を使って患者さんのところに伺います。都市では住宅街の狭い道を通るので、軽自動車を使う歯科医院が多いようです。私が勤めている歯科医院の訪問車も軽なので、歯科医師、歯科助手、コーディネータの3人が乗って、後ろに診療用の荷物を積めば少しきついくらいになります。みんなで協力してお手入れもします。ガソリンを入れて、洗車して、雪の日のチェーンも自分で巻いて……いつの間にか車に詳しくなります。


 

3.私が訪問歯科衛生士を選んだきっかけ

私が訪問歯科の扉を叩いたのは、出産がきっかけでした。昔、外来診療で、忙しいとなかなか上がれず子供のお迎えに間に合わない……という先輩の姿を何度も見てきたため、訪問なら時間の自由がある程度きくのでは?と思ったのがきっかけです。ライフステージの変化という、自分の都合で選んだ訪問歯科ですが、とても楽しく仕事をさせていただいています。 外来診療よりじっくり一人の患者様に向き合える点、歯科衛生士としてだけでなく、一人の人間としてのコミュニケーションが求められる点が、自分には向いているなと感じています。訪問歯科に入ったばかりの頃「熱くて寒くて大変だけど、待っててくれる方のところに行くのは本当に楽しい」と先輩に言われた言葉を、今、本当にそのとおりだと思っています。患者さんの気持ちがダイレクトに届くのが本当に嬉しく、気持ちが伝わると、こちらもお役に立てたらいいなという気持ちが更に強くなります。

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